ふくいの遺言・相続手続き相談室がみなさまの疑問にお答えする「教えて!ふくいの相談室」。
今回は「特別受益と寄与分について」についてお答えします。
1.遺産分割協議について
民法 (遺産の分割の基準)
第九百六条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
共同相続人全員で行う遺産分割協議において、各相続人の相続分を算定する際に、共同相続人間の公平を図るために設けられた制度がこれから説明する特別受益と寄与分です。
民法改正により、2023年(令和5年)4月1日以降は、相続開始から10年を経過した後に遺産分割協議をする場合には、原則として特別受益や寄与分を主張することができなくなります。
2.特別受益とは
特別受益とは、被相続人から①遺言によって財産を譲り受けた者(遺贈者)②婚姻もしくは養子縁組のため生前に贈与を受けた者③生計の資本として生前に贈与を受けた者がいるときは、これら一部の相続人だけが受けた特別な利益のことをいいます。
特別受益があると、共同相続人間で不公平な結果を生じてしまうことになるため、この相続分の前渡しとみられる特別受益分を相続財産に加算する「持戻し」を行って、相続分を修正する遺産分割協議等を行うこととなります。
また、配偶者は常に相続人となりますので、妻や夫に過度な贈与が行われた場合は特別受益に該当しますが、いわゆる「おしどり贈与」の場合は贈与税の非課税制度の一つで、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をした場合、贈与税の基礎控除額110万円の他に2000万円までが非課税になり、民法改正により、2019年(令和元年)7月1日以降は「持戻し」を行わなくてもよいこととなりました。
もっとも、他の相続人の遺留分を侵害している場合には、遺留分の算定の基礎となる財産に「おしどり贈与」分も含めることとなります。
生前贈与等がすべて特別受益に該当するわけではありませんので、該当するかどうかは以下の具体例を参考の目安にしてみてください。
婚姻もしくは養子縁組のための贈与
婚姻や養子縁組をした際の持参金や支度金、高額な嫁入り道具等の場合は特別受益になる場合があります。ただし、結納や婚姻式の費用は親の負担が慣習的になっており、親の収入や地域性なども考慮されますが、一般的な相場を大きく上回らなければ、特別受益にはあたらないと考えられます。
生計の資本としての贈与
生計の資本とは、生活の基盤となる財産などを指しますので、住居や事業用不動産の贈与を受けた場合、住居の取得費用や建設費用、事業資金の提供を受けた場合などが代表的な例です。
小遣いや生活費、遊興費のための贈与等は扶養義務の範囲内であれば、特別受益にあたらないと考えられます。
高等教育(大学等)の教育費も特別に高額な場合を除いて、特別受益にあたらないと考えられます。
なお、親から子供への贈与が扶養義務の範囲を超えるような生計の資本になっていたような場合には、特別受益に該当する場合があります。
高額な生命保険金の受取人
生命保険金(死亡保険金)は受領した相続人固有の財産になるため、特別受益には該当しませんが、例外的に、遺産の全体からみて、保険金を受領した相続人が経済的に自立しており、受領しない相続人との間の不公平が看過しがたい程度に大きいような特別の事情がある場合は、特別受益に準じて扱われることとなります。
賃借権等の設定
相続人である子が被相続人の親から土地を借りていた場合、近隣相場以下の賃借料しか支払っていない場合には、近隣相場の賃料との差額が特別受益に該当する場合があります。
3.寄与分とは
寄与分とは、共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について相続人が被相続人の財産の形成に貢献をしたと認められる者がいる場合に、その相続人の法定相続分を増額する制度です。生前に被相続人に対して貢献していたことに対して考慮するもので、相続人間で貢献度に差がある場合に不公平感を解消するものが寄与分です。
被相続人の事業を手伝ったり、資金を援助したり、療養介護をしたり、その他生活費の面倒を見ていた事など「被相続人の財産の形成に貢献をした」事が該当します。
目安として、事業従事型、金銭出資型、療養看護型、扶養型、財産管理型などがあります。
寄与分がある場合は、相続財産から寄与分を差し引いて、相続分を修正する遺産分割協議等を行うこととなります。
4.特別寄与料とは
民法 第十章 特別の寄与
第千五十条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
特別寄与料とは、相続人でない親族が被相続人の介護等を行っていた場合で、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたその労力に報いることを目的として、民法改正により創設されました。
例えば、長男の妻が無償で被相続人(義理の父)の介護等を行っていた場合、被相続人(義理の父)が亡くなっても、長男の妻には、義理の父の相続権がないことから、介護等についての寄与分を受け取ることができませんでした。
このようなケースの場合、被相続人の親族であり、相続人ではない長男の妻(特別寄与者)に金銭を請求する権利を与えるために創設されたのが、特別寄与料です。
つまり、被相続人の相続人でない親族が、被相続人を無償で療養看護するなどして、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合、相続開始後に相続人に対して、この寄与に応じた金銭を請求することができることとなりました。
なお、この制度は2019年(令和元年)7月1日の施行日以後に開始した相続に関して適用されます。
今回は以上となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。


