相続人のなかに認知症の方がいる場合の相続手続き

後見業務

ふくいの遺言・相続手続き相談室では、相続に関するさまざまな疑問にお答えしています。今回は、「相続人のなかに認知症の方がいる場合の相続手続き」について、わかりやすく解説します。

1. 認知症の方は遺産分割協議に参加できるのか?

 遺産分割協議とは、相続が発生した際に、相続人全員で誰がどの財産を取得するかについて話し合う手続きです。認知症の方が相続人である場合、その方が法律行為を行う意思能力を欠いていると判断されることがあり、意思能力のない方を含めて協議を進めることはできません。また、認知症の方を除外して協議を進めた場合、その協議は無効となります。

2. 成年後見制度を利用する

 このような場合、相続手続きを進めるには家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、成年後見人に認知症の方に代わって協議に参加してもらう必要があります。

 ただし、成年後見人は本人(成年被後見人)の利益を最優先に考える義務があり、原則として法定相続分に基づいた公平な分割を行う必要があります。そのため、相続人それぞれの事情に沿った柔軟な遺産分割はできなくなります。

 また、成年後見制度は認知症の方を長期的に保護する目的があるため、遺産分割が終了しても成年後見人の役割は終わりません。成年被後見人が亡くなるまで、成年後見人は財産管理などの業務を継続する必要があります。

3. 事前に行うべき対策は?

 相続人のなかに認知症の方がいる場合、こうした様々な問題を未然に防ぐには遺言書の作成が有効です。遺言書で「誰がどの財産を相続するのか」を明確に指定しておくことで、遺産分割協議を省略することができます。これにより、認知症の方が相続人に含まれている場合でも、スムーズに相続手続きを進めることが可能になります。

 令和5年の統計によると、成年後見制度の申立てのうち約8.5%(10,300件)が相続手続きを動機として行われています。高齢化が進む中で、このようなケースは今後さらに増加することが予想されます。

 当相談室では、成年後見制度をはじめ、相続に関するさまざまなご相談を承っています。事前準備をしっかりと行い、専門家のアドバイスを活用することで、納得のいく円満な相続手続きを実現しましょう。

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